私が初めて『ミセン―未生―』を見たとき、応援していたのはチャン・グレだった。
当時の私は今より若く、年齢も彼に近かった。よく分からない会社に入り、軽く見られ、失敗を重ねながら少しずつ成長していく。自然と彼の目線でドラマを見ていた。
困難を乗り越えるたびに、私もうれしくなった。弱い立場にいる人が成長する姿を応援したくなるのは、ごく自然なことだと思う。
ところが、何年もたって『ミセン』を見返したら、不思議なことに別の人物が気になった。
オ・サンシク課長だ。
今の私はチャン・グレよりもオ課長に近い年齢になった。グレの苦労も相変わらず理解できる。それでも今回は、オ課長の悩みや行動、とりわけ人との向き合い方が強く心に残った。
ドラマが変わったのではない。それを見る私の目線が変わったのだ。
なぜ韓国の会社員は『ミセン』に共感したのか
『ミセン』はユン・テホ作家の同名ウェブトゥーンを原作とし、2014年にtvNで放送されたドラマだ。プロ棋士を目指していたチャン・グレが夢を断念し、総合商社「ワン・インターナショナル」に入るところから物語が始まる。
当時、多くの韓国人が共感したのは、会社という場所が驚くほど現実的に描かれていたからだ。
自分の利益を優先する上司。社内政治。業績をめぐる競争。理不尽な指示。雇用への不安。
登場する対立が大げさなテレビドラマの出来事には見えない。会社勤めをしたことがあれば、「こういう人、いたな」と思う場面があるだろう。
もちろん会社によって雰囲気は違う。韓国の会社すべてが、当時も今もワン・インターナショナルのようだと言いたいわけではない。
ただ、時代背景は知っておく価値がある。韓国政府の2014年8月の公式統計では、非正規雇用労働者は約608万人で、賃金労働者の32.4%を占めていた。この数字だけで人気の理由は説明できないが、当時の雇用不安を理解する手がかりにはなる。
初めて見たとき、身勝手な上司や社内政治はかなり現実的だと感じた。むしろ非現実的に思えたのは、その中でグレを守ろうとするオ課長のような上司の存在だった。
そもそもチャン・グレの入社からしてファンタジーでは?
『ミセン』はリアルなオフィスドラマだと言われる。私も大筋ではそう思う。だが、よく考えると物語の出発点から少し変わっている。
グレは高校卒業程度の学力認定試験を経ているが、大学の卒業資格はなく、総合商社での勤務経験もない。幼い頃からプロ棋士を目指してきたので、一般的な就職活動の準備もしていなかった。
そんな彼が、知人の紹介をきっかけに大企業の総合商社でインターンとして働き始める。
2014年の韓国の大企業採用事情を考えると、かなり例外的な設定だ。高卒者が大企業に就職できなかったという意味ではない。ただ、学歴、経歴、入社経緯を合わせて考えると、通常の採用ルートからは遠い。
職場の現実を描いたドラマなのに、主人公がその職場に入れること自体、すでにファンタジーに近い。
興味深いのは、その後だ。
やっと入れた会社でグレが経験することは、驚くほど現実的になる。業務用語さえ分からず、同僚とは出発点も違う。失敗しながら少しずつ仕事を覚え、周囲に認められていく。
それでも、仕事ができるようになったからといって、雇用契約まで自分の思いどおりにできるわけではない。能力を認めてもらうことと、安定した正社員の地位を得ることは別の問題だ。
この矛盾こそ面白い。入社の機会はファンタジーに近いのに、入社後に待っているのは冷徹な現実なのである。
役職が違っても、人間としての価値は変わらない
外国人が『ミセン』を見ると、韓国企業の役職や呼び方が少し分かりにくいかもしれない。
韓国では「代理(대리)」「課長(과장)」「次長(차장)」「部長(부장)」などの役職名で互いを呼ぶことが多い。日本語の同じ漢字の役職と、権限や位置づけが必ず一致するわけではない。
面白いのは、韓国企業には「社員(사원)」という正式な職級もあるのに、代理や課長には「イ代理」「オ課長」のように姓と役職を組み合わせる一方、インターンや若手社員には「チャン・グレさん(장그래 씨)」のように名前で呼びかける場面が多いことだ。伝統的な企業文化では見られる慣行だが、どの会社でも同じではない。
役職と年齢は別だが、人間関係に応じて呼び方が変わる点では共通する。韓国人が年齢を尋ねる理由は、年齢・敬語・呼び方についての記事でも説明した。
役職は業務上の責任や権限、報告系統に結びつく。組織に必要なものだろう。
しかし、役職が上だからといって、人間としての価値まで上になるわけではない。上司に指示する権限があっても、部下をぞんざいに扱う権利まであるわけではない。
現実にはこの区別が簡単に崩れる。『ミセン』にも立場を利用して人を追い詰め、責任を押しつけ、自分の利益を優先する人が登場する。
そんな人たちの中で、オ課長は少し違って見える。
オ課長とカン・ヘジュン代理――見返して印象が変わった二人
オ課長:一緒に理不尽さを怒ってくれる上司
私がオ課長を好きなのは、ただグレに優しくしてくれるからではない。
彼はいつも親切なわけではない。怒ることもあれば、部下を叱ることもある。常に正しいわけでもない。
ただ、彼には一つの基準があるように見える。人を軽く扱わないことだ。
序盤、別の部署のインターンの失敗が原因でグレが理不尽に叱られる場面がある。オ課長も最初は事情を誤解してグレを叱る。だが、真相を知ると相手の部署の課長に抗議する。
「うちの子だけが叱られたじゃないか」――そんな趣旨の言葉だ。
以前、韓国語の「私たち・うち」を意味する「우리(ウリ)」を扱った記事でもこの場面に触れた。そのときは、「うちの子」という言い方に表れる関係や仲間意識がテーマだった。
だが今回、強く心に残ったのは言葉の文化的意味ではない。
グレが受けた理不尽な扱いに、オ課長が一緒になって怒ることだった。
部下が不当に扱われたと知ったとき、ただ理解するだけで終わらず、自分から動く。その人の悔しさを、自分のことのように受け止める。
これは単なる同情とは違う。
部下を率いる立場なら、実績も仕事の能力も大切だ。それでも、まず守るべきものがあると私は思う。人としての尊厳だ。
私はオ課長のような上司に出会いたかった。そして、自分が誰かの上司になるなら、ああいう人になりたかった。
カン代理:最初は嫌な先輩だと思っていた
カン・ヘジュン代理は、初めて見たとき、チャン・ベッキをわざと無視し、苦しめる先輩のように見えた。私も否定的に受け取っていた。
しかし見返してみると違った。彼はベッキに仕事の基本を教え、職場になじむための力を身につけさせる先輩だった。もちろん、その教え方がいつも優しかったわけではない。
今回見返して、あらためて目を引いた脇役の一人である。
現実的な結末と、もう一つのハッピーエンド
ここから『ミセン』の結末に触れます。ネタバレにご注意ください。
私は個人的にハッピーエンドが好きだ。苦労してきた主人公には、最後に報われてほしいと思う。
だからグレがワン・インターナショナルの正社員になれなかったことは残念だった。仕事に懸命に取り組み、能力を証明し、同僚たちにも認められた。それだけでは足りなかった。
個人の努力や能力だけでは解決できない問題がある。ドラマは最後までその現実から目をそらさなかった。
考えてみれば、入社自体が非常に例外的な幸運だったグレが正社員への転換までかなえていたら、あまりにも都合のいい成功物語になっていたかもしれない。
そう考えると、この結末は現実的だった。望んでいた結末ではなかったけれど。
もちろん物語はそこで終わらない。ワン・インターナショナルを離れたオ課長は、新しい会社で再出発する。グレとキム・ドンシクもそこで再び一緒に働くことになる。
グレは元の会社には残れなかった。でも、仕事で身につけた力も経験も、自分を信じてくれる仲間も失ってはいない。
だから、この終わり方も好きだった。望んだ正社員の座を得られなかったことは残念だ。それでも、新しい出発を失敗とだけ呼ぶことはできない。
別の意味では、確かにハッピーエンドだった。
もちろん現実の雇用不安を、希望のある物語だからといって軽く扱うわけにはいかない。それでも、ドラマは最後を単純な絶望にはしなかった。
原作もいい。でも私はドラマ版のほうが好きだった
ユン・テホ作家の原作ウェブトゥーンも読んだ。原作も素晴らしい。ただ、個人的にはドラマ版のほうが好きだった。
俳優の演技や演出も理由の一つだが、特に音楽の力が大きかったと思う。
特定の一曲が好きだという話ではない。音楽が場面に入る、その合わせ方がいい。特に沈んだ場面や寂しい場面で、人物が何も語らなくても感情が伝わってくる。
曲についてはtvN公式の『ミセン』OSTページで確認できる。
ウェブトゥーンでは絵とせりふから人物の感情を想像する。ドラマには表情、声、動き、そして音楽が加わる。私はその組み合わせが好きだ。
外国人に『ミセン』を勧めるとき、韓国の会社文化が分かるということだけを理由にしたくはない。韓国文化に特別な関心がなくても十分楽しめる。それだけよくできた物語だからだ。
最初はグレの目線で成長を応援した。そして年齢を重ね、オ課長に近づいた今は、彼の人との向き合い方が深く心に残る。
さらに年月がたってから見返したら、また別の人物が気になるかもしれない。そう考えるのも面白い。
誰の目線で見るかによって、物語から受け取るものは変わる。それでも『ミセン』がいいドラマだという私の思いは変わらない。
『ミセン』をご覧になりましたか。初めて見たときと見返したときで、最も共感する人物は変わりましたか。ぜひコメントで教えてください。
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